Macrophage II の日記

ヨット(BW-33)のレストア記録を中心にした独り言

番外編 カズワン沈没に想うこと その7 緊急時の通信手段

カズワンには会社のドコモ携帯電話を搭載することになっていたが、その電話は事務所に置かれっぱなしだっとと言う。

カズワンには、アマチュア無線機が搭載されていた。

アマチュア無線は、以前の船検の基準に合わせて搭載していたのだろう(私の想像)。

昔のルールだと、(船用の)無線電話装置の代わりに、アマチュア無線機でも許してくれた時代があった。ある意味、規制緩和だったのだろうが、携帯電話の普及にともなって、限定沿海であれば、携帯でもよいというルールに変わり、アマチュア無線機は制度上はお払い箱となったのだ。

会社の無線のアンテナが壊れていたのは、制度上必要がなくなったからだろう。

 

カズワンに積まれていたアマチュア無線機だが、これによって同業者との交信が可能となり、異常を察知した同業者が118番通報をすることができた。

そしてその数分後には乗船中の旅客の携帯電話からかけられた118番通報が続くのだが、もしも、(海上でつながりやすいとされる)ドコモの携帯電話すら繋がらないエリアだったら、無線しか手段がなかったはずだ。

海上のエリアについては、ドコモは、相当努力していると思う。

日本の沿岸をほぼ全てカバーしようとしているようで、ありがとう、と言いたい。

しかし、Macrophage IIの係留地付近でいうと、佐賀関の北、数マイルの海域は、頼みのドコモでさえも電波も途切れる場所がある。

やはり、緊急時の連絡方法が、携帯電話だけに頼るというのは怖いと思う。

 

もしカズワンの遭難が米国でおこったものであれば、通信にはVHFが使われ、船舶と沿岸警備隊の間で直接会話ができたはずだし、場合によっては、DCSによるdistress シグナルが発信されたはずだ。

 

日本では、もったいぶって”国際”VHFなどと呼ぶが、たんなるFM、超短波無線機だ。

米国の中古艇情報などみると、ほとんどの艇に搭載されている。

(ちなみに、VHF無線機だが、ほぼ日本製が独占しているのだと思う。)

VHFにより、周辺の船舶やマリーナとの交信が可能となり、さらには沿岸警備隊とも、海軍の艦船であっても直接会話が可能となる。

米国では、Marine VHF(日本でいう国際VHF)の免許制度はとっくの昔に廃止している。

免許制度を維持することは、まったく公共の利にならないという判断である。

なぜ日本では、それができないのか? 

一時、免許などに関わる公益法人が、事業仕分けの対象となったが、なにも変わらなかった。

 

海上安全を確実なものとして、救難活動を効率化するためには、小型船舶でのVHFの普及は必須だと思う。

必要なときに、ただちに周辺船舶と交信できて、海保とも安定的に直接通信できる手段であるVHFを普及させることは、公共の利にかなう。

我が国の制度を国際化するためには、まずは”国際”VHFなどという謎の呼び方をやめて、まったく”特殊”な無線ではないのだから、”海上特殊無線技士”などの免許制度は即刻廃止すべきだと思う。

ちなみに、米国沿岸警備隊も、DSCを推奨している。

そのことで、沿岸警備隊のリソースを相当軽減できるとされる。

「5Wの国際VHF無線機でもDSC機能付の場合は、開局時に第2級海上特殊無線技士の資格が必要になります」というナンセンスはおしまいにしてほしい。

国際VHF免許制度撤廃は、総務省やその関連法人が反発するのかもしれないが、新しい考え方で社会のニーズに答えていけば、困らないはずだ。

というのが、これから先のVHFは、GPS機能つきDSC(Digital Selective Calling)が国際的には主流となる。

最終的には、DCSの登録(免許ではない)を法人が担えばよいではないか。

我が国に登録されている小型船舶が40万隻として、その80%が登録したら、1年間千円の登録費で、年間3億円だ。

無線免許制度廃止は、無線業界にしてみれば、市場拡大につながる話だし、それによって海上安全につながり、救助活動も効率化する。

小型船のほとんどが搭載していないのに、海保がCH16(呼び出しチャンネル)を常時聞いているのは、効率が悪すぎる。将来的に全てがDCSになれば、海保は常時VHFをウォッチしなくてもよくなるかもしれない。(沿岸警備隊はそれを目指しているようだ。)

 

無線免許制度廃止で得られる利はとても大きいはずだ。