かつて私は、北米西海岸に居住していた。そのころの話である。
いつものように夕食前に、アパートの窓から海をみていた。
すると、船長は30フィート弱といったところのヨットが太平洋に沈む夕日の中セーリングしている。それだけであれば、なんの心配もないのだが、そのヨットの船尾には、ストロボライトが激しく点滅している。
通常、船舶の灯火としては、緊急時にしか許可されないものだ。
ビデオカメラをオンにして、30倍だったかズームでみてみたが、へんなライトを点滅させている他に変わった様子はない。
大丈夫なのか? もうすぐ日もくれる。
念の為、海岸警備隊(US Coast Guard)に電話をかけた。
おちついた口調で、淡々と情報を収集された。
最後に、報告したことへの感謝の言葉があり、電話を切った。
その間も、ヨットは少しずつ、良い風をつかんで南下している。
私は、きっと大丈夫なんだろう、このまま様子見かな、と思いながらみていた。
そして、電話をきって5分もたっただろうか、ゴールデンゲートに機体にUCSGと書いたのオレンジ色の大型ヘリコプターが現れ、ヨットまで一直線に飛んでいった!
ヘリは、数回、ヨットの周りを旋回すると、ヨットのストロボは消えて、ヘリも帰っていった。
今回の遭難においても、いち早く海上保安庁のヘリコプターが出動している。
しかし、報告書の情報では、海上保安庁のヘリコプターが離陸できたのは、同業者による通報(1313)から、2時間以上をたった1520と記載されている。別の任務で飛んでいた機体がいったん基地にもどり、給油と潜水士をのせる必要があったためのようだ。
サンフランシスコ沖でみた沿岸警備隊のヘリは、”事件”発生時、たまたま近くを飛んでいたのかもしれないし、USCG Air Station(航空基地)は、数マイルのところだし、急変した気象の中でおこったカズワンの事故とは状況は異なるだろう。
ただ、日米比較すると、沿岸警備隊のエアーステーションは、全米に40箇所以上、保有する航空機数も多く、なんといっても、予算規模が圧倒的に異なっていて、日米で一桁ちがう。
日本の海上保安庁の平成5年予算は、総額 2,431億円、2023年のUSCGの予算は、$13.82 billion 、日本円で約1兆8000億円である。
平成5年予算には、知床遊覧船事故を受けた救助・救急体制の強化に、3.6億円計上されている。
治安・救難・防災業務の充実には、13,7億円だそうだ。
計上されないよりましだが、これ、海洋国家日本の予算として一桁違うように思うのは私だけだろうか?