失速したMacrophage II は、先頭集団から大きく離れてしまった。
今回のレースは、大入島を左にみながら一周し、佐伯港の前がゴールだ。
先頭集団の多くは、大入島に接近した最短コースをとっているのだが、Macrophage IIは、微風だと動かない。急がば回れ、すこし沖にだして、島を大回りしながら、スピンをあげる作戦をとった。
1184番のスピンをあげて追い上げるMacrophage IIの姿をイメージしながら、島の先端を回った。
そして大入島と九州本土の間の狭い海峡に入り、新兵器”タッカー”をジブファーラーにセット。スピンバッグからスピンを取り出し、一気にハリヤードで引き上げた。
すると、スピンはするするとマストトップまで上がったと同時に、ファーラーに巻きついてしまった。
またもや失速するMacrophage II。レースうんぬんではなく、絶体絶命のピンチなのだ。
そもそもタッカーはスピンのクリューをフォアステーにつけるための道具だ。角度からして、クウォーターリーからアビーム寸前まで程度であれば使えるだろうが、ま追っての風だと安定せずに、中途半端にジャイブを繰り返す。
なので簡単にフォアステー(ファーラー)に絡まるのだろう。
ヨットではヘンテコな英語が使われるが、タッカーという呼び名は絶対におかしい!
それを言うなら、ジャイバーだろ、と海上で気が付く。いまさら言ってもしかたない。
Yさんがスピンを下ろそうとするが、からまったスピンは落ちてこない。
しかたなく、レース海上をジグザグに走り、さらには逆行したり、造船所の防波堤ギリギリまで帆走して、わざわざ風のないところを選んで走ってみたりするがダメだ。
ふと気がつくと、後ろには1艇せまってくる。
ゴールはすぐそこなのに。
いつまでもフィニッシュしないと、ゴールラインで待機する本部艇にも迷惑だ。
ここではトラブルの解消はできないと判断し、フィニッシュだけはしようということになった。
スピンが絡んだままの見っともない姿で、佐伯湾をよろよろと走る。
本部艇を右手にみて、フィニッシュラインをフィニッシュ!
Macrophage IIのレース再デビューは、幕を閉じた。