無垢島から保戸島までの距離は4マイル弱。
無垢には、遠い過去(90年代)には何度も行ったが、保戸島へは縁がなかった。
昔の話だが、保戸島へヨットで行くのはやめたほうがよいと皆さんが言っていたのを思い出す。
港が狭くて、漁船がひしめき合っていて、ゲスト艇が入れる隙間もなく、漁師からまったく歓迎されないという話だった。
たしかに、保戸島といえば、マグロ漁がさかんで景気がよかったようだ。
大分の某地元デパートの面々がヨットを共同でもっていて、当時、本店でペルシャ絨毯展やってるという話をしてくれた。
そんな絨毯買うひといるんですか?と尋ねたら、”保戸島マグロ漁師の奥さん”、と真面目に言われたのを覚えている。もちろん、その場で現金で購入だそうだ。
すごい島だな、と。
ウェブ上に、昭和の保戸島の港の写真がいくつかあがってるが、狭い構内にひしめきあう漁船と、複数の遠洋漁業のための大型漁船が浮かんでいる。
私が船舶免許を取った時、保戸島漁協所属の若い漁師とご一緒する機会があったが、大分市内まで大型の高級乗用車(たしかクラウンかセドリック)の新車をド派手なシャコタンにして爆音をあげて会場入りされて、びっくりした。ちなみに島には道路はない。
免許とってこいと言われて来たとのことだった。
プロの漁師なので1級小型船舶は必須だったのだろう。
私は、免許取って以来一度も操船することのない総トン数20トンの船を、えっちらえっちら操船するのだが、生まれながらの漁師である彼は、凄まじいスピードで岸壁に船を寄せると勢いよくプロペラを後進、船尾を瞬間に岸壁と平行にしたかと思うと、船は見事に岸壁と見事に平行に止まった。ところが、これが失格。ゆっくり、よたよた着岸させた私がオッケーで、彼はそのことに全く納得できず、激しく抗議。
俺の方がうまいだろ、と。ごもっともなのだが、、、
そんな荒くれ漁師たちが岸壁に大勢いるに違いないと想像しながら、恐る恐る訪問したのであった。
島の中心の漁港は、漁船が多いだろうから、北側にできている新しい港なら、1泊くらいおかせてもらえるだろうと思い、最初から集落から少し離れた灯台をめざす。
一応、断っておこうと漁協に電話するが出ない。土曜日だからいないのだろう。
港の中は、とても広く、ある意味どこにつけても問題なさそうなのだが、大潮なので梯子のついたところでないと乗り降りできない。梯子は数カ所しかなかったので、ヨットがつけられるところは限られるかもしれない。
着岸時、大潮の干潮だったが、岸壁真横で推進4メートルで深さは問題ない。
ただ、干潮すぎて、梯子にはたくさんの貝殻がついていて、ハルをゴリゴリやってしまった。
フェンダーの厚みより梯子の厚みが大きくて、フェンダーが役に立たないのだ。
ちょっと残念ではあったが、ハルに傷つくのは、大いに結構だと割り切ることにしている。
レストアは、壊れたところ、傷ついたところを修復すると、周辺の壊れてない部分よりグンと綺麗になる、というプロセスの繰り返しなのだ。
帰ったら、修復だな〜〜と思いながら、舫を結ぶが、結構なうねりがはいってくる。
たいした風もないのに、港内に唯一の船舶であるMacrophage II は、ゆっくり揺られている。
誰かに挨拶しといたほうがよいかなと、上陸する。
漁師で、ここはダメとか、あっちにとめてとか言うひともいない。
そもそも、周辺に人っこ一人いないのだった!