船底のゲルコートリセット、船体塗装、エンジン再整備などが進行する中、マストを含めて艤装品は後回しにしていた。
というのが、船体のレストアが終わらないことには、マストを立てても意味がないからだ。
なので、かなり長い間、マストは地上におりたままで、私自身は、マストをどうやって仕上げるべきか考えていた。
そんなある日、神奈川県の工場地帯、いわゆる京浜工業地帯の一角を、自転車で探索していたら、アルマイト加工の工場を発見した。
ちなみに、マウンテンバイクで、うろうろするのも好きなのだ。
10メートルを超えるマストをアルマイト加工してもらえないか聞いてみた。
結論からいえば、この工場であればできるらしい。
しかし、コストは見合わないのでは、と言われた。
というのが、まず、10メートルを超えるものを九州から関東までトラックにのせて往復させる必要があること。
その上で、すくなくとも半日は、このマストの処理だけのために工場を稼働させる必要があること。つまり、他の仕事を完全にストップさせないと出来ない作業だということである。
見積もりを取るまでもなく、アルマイト加工は断念した。
しかし、世の中、こと工業製品については、不可能ということは滅多に無いことも理解できた。